設立趣意書

 人が社会の中で生活するにあたって、コミュニケーションはあらゆる活動において必要です。人と人とがコミュニケーションを行う際には、言語が重要な役割を果たします。その言語に障害のある人達は、ごく普通の家庭生活や、職業、学業、趣味活動など生活のあらゆる場面で困難に直面します。
 近年障害のある人の社会参加を促進するためにバリアフリーの考え方が普及してきました。平成15年4月には改正ハートビル法が施行され、デパート、劇場、学校、共同住宅などは高齢者や身体障害者が利用しやすいように、バリアフリーにすることが努力義務になっています。乗降客の多い駅では、エレベーターやエスカレーターが設置されている所も増えてきました。これらは身体障害に対するバリアフリーの促進です。
 コミュニケーション障害のある人が社会参加をするためには、コミュニケーションのバリアフリーが必要です。コミュニケーション障害の一つである聴覚障害者については、手話通訳や要約筆記などの手立てがあります。それ以外の種々の言語障害についてもこのようなバリアフリーの手立てが必要であることは言うまでもありません。中でも失語症者は話すことだけでなく、話を聞いて理解する、文字を書く、読むという言語の様々な機能に支障をきたすので、一般社会への参加はもちろん、その他の障害者集団への参加もままならない状況に置かれています。そこで我々言語聴覚士の有志が、失語症者の社会参加を促進するためには、失語症のことをよく理解して、失語症者との会話技術を習得し援助する「失語症会話パートナー」が必要だと考え、平成12年から毎年6ヶ月にわたる講座を開き、その養成を行ってきました。これまでに100名を越す人が受講し、その多くが会話パートナーとして活動を継続しています。この活動が全国的に知られるようになり、活動に賛同する声が全国の失語症友の会や言語聴覚士から寄せられ、養成のノウハウを教えて欲しいという講演依頼も数多く来るようになりました。
 活動5年目にあたり、今後も引き続き講座を開講し「失語症会話パートナー」養成を行うこと、講座修了者に対しては更にスキルアップを目指した研修が必要であること、講座修了者の活動を失語症者の個人的なニードと結びつけるためには、責任を持ってそのコーディネートをする組織が必要であること、全国からの講演依頼に応え講師派遣なども行う必要があること、などを検討した結果、これまでの言語聴覚士による任意団体から、講座修了者である失語症会話パートナー、更には当事者である失語症者を含めた会員による特定非営利活動法人に移行し、更に活動を言語障害者全般の社会参加を目指す幅広いものに展開したいと考えるに至りました。
 以上の趣旨に鑑み、我々は特定非営利活動法人言語障害者の社会参加を支援するパートナーの会「和音」を設立し、言語障害者と言語障害者を取り囲む全ての人々に対して、言語障害に関する知識及び言語障害者との会話技術の普及、ならびに言語障害者の社会参加を促進する事業を行い、言語障害が社会参加の障壁にならず、全ての人々が社会の一員として等しく安心して生活できる社会作りと、言語障害者の福祉の増進に寄与することを目指します。

 具体的な事業としては
1.失語症会話パートナー養成講座開催、コミュニケーション障害関連セミナー開催および講師派遣等、教育研修事業
2.言語障害者支援の制度化についての調査等、調査研究及び情報収集事業
3.ホームページ作成、管理運営等、情報提供事業
4.会話パートナー派遣、失語症サロン等、社会参加支援事業
5.機関紙発行、会話支援ノート作成等、会報及び出版物発行事業
の5つを柱とする事業を展開していきたいと考えています。

                         平成16年10月3日
              地域ST連絡会・失語症会話パートナー養成部会